毎週月曜の朝、私の決まった仕事が1つありました。先週1週間分のExcelファイルをまとめて、レポート用のサマリーを作る という作業です。時間にして毎回30分前後。月に4回、年に48回。計算すると年間24時間をこれに費やしていました。

これをClaude Codeで自動化しようと決めたのが、導入後2ヶ月目のことです。うまくいくまでに1週間かかりましたが、今は 毎週3分以内 で終わるようになりました。この記事では、その1週間の試行錯誤を時系列で書きます。

最初にやった無謀な指示

導入したての頃、筆者は甘く見ていました。こう投げれば動くだろう、と。

このフォルダにあるExcelを全部まとめて、いい感じにレポートを作ってください。

結果は散々でした。返ってきたのは、ただの一覧表。思っていた月別・カテゴリ別の集計にはなっていません。

今なら理由がわかります。「いい感じ」が抽象的すぎた のです。AIはエスパーではないので、こちらが頭の中でイメージしている「いい感じ」を推測できません。

2回目は具体的に書いた

翌日、頭を冷やしてプロンプトを書き直しました。

raw/ フォルダにある sales_*.xlsx をすべて読んで、次の形式でoutput/summary.xlsxを作ってください。

  • シート1: 月別売上サマリー(月/売上/前月比)
  • シート2: カテゴリ別ランキング(カテゴリ/売上/順位)
  • シート3: 担当者別の実績(担当者/売上/案件数)

元ファイルの列名は「日付」「商品カテゴリ」「金額」「担当者」です。

これで動きました。30秒で。指示の長さが5倍になっただけで、精度がまるで違いました。

この瞬間、筆者のAI観が変わりました。「雑に頼んでもAIは察してくれない」 という当たり前の事実を、体で覚えたのです。

意外な落とし穴|ファイルを開きっぱなし

次に遭遇したのは、技術的な問題ではなく、うっかりミスでした。

自分が普段から使っているExcelを開いたまま指示を出すと、AIがファイルを書き換えようとしてエラーになります。

Error: File is locked by another process.

「あれ、また動かない」と思ったら、単にExcelを閉じ忘れていただけ。それ以来、筆者は作業前に必ずExcelを全部閉じる癖をつけました。

3日目、テンプレート化を試みた

毎回同じプロンプトを書くのは面倒なので、作業フォルダに CLAUDE.md を置いてルールを書いてみました。

# 月次集計ルール

raw/ フォルダに sales_*.xlsx が置かれたら、以下を実行:

1. すべてのファイルを読み込み、結合する
2. output/summary.xlsx を生成
3. シート構成:
   - 月別サマリー (月/売上/前月比)
   - カテゴリ別ランキング (カテゴリ/売上/順位)
   - 担当者別実績 (担当者/売上/案件数)
4. 元ファイルの列名は「日付」「商品カテゴリ」「金額」「担当者」

効果は絶大でした。翌週からは「今週分をお願いします」の一言で、同じ品質のレポートが数十秒で出てくるようになりました。

4日目、さらに調整

1週間やってみると、微妙に気になる点が出てきました。

  • 月別サマリーのフォントが小さい
  • 金額にカンマ区切りが入っていない
  • 前月比の計算方法が気に食わない

これらを CLAUDE.md に追記することで、解決しました。「気に入らないところはその都度ルールに書き足していく」 のが、一番続けやすい運用でした。

時間の比較(筆者の実測)

3ヶ月使ってみた実測値です。

作業ステップ

手作業

AI活用(初日)

AI活用(定着後)

ファイルを集める

3分

3分

3分

データを読み込む

5分

即時

即時

集計・計算

12分

2分

30秒

レイアウト調整

8分

3分

30秒

見直し

2分

2分

2分

合計

30分

10分

3分

ファイル集めの3分は物理的に必要なので短縮できません。でもそれ以外の27分が、ほぼ消えました。年間24時間が2時間強になった計算です。

Excel作業でよく使う指示パターン7つ

筆者が3ヶ月で定着した、実用的なプロンプトを紹介します。

1. 複数ファイルの統合

このフォルダにある〇〇_*.xlsx を全部結合して、1シートにまとめてください。

2. 表記ゆれの統一

A列の会社名で、「(株)」「(株)」は「株式会社」に、全角英数字は半角に統一してください。

3. エラーの原因調査

sheet1.xlsx で #N/A が発生している原因を調べて、修正版を作ってください。

4. 重複の排除

customer.xlsx でメールアドレスが重複している行を1つだけ残して削除してください。削除件数も教えてください。

5. データの分類

expense.xlsx の取引内容から、勘定科目(交通費/通信費/消耗品費/交際費)を推測してtax_categoryという列に追加してください。

6. 集計と前月比

monthly_*.xlsx から、直近3ヶ月の売上推移と前月比を算出して、summary.xlsxに保存してください。

7. 形式変換

product.xlsx をMarkdown表形式に変換して、product.md に保存してください。

3ヶ月使ってわかった注意点

完全自動化には落とし穴がある

AIが全部やってくれるからといって、結果を見直さないのは危険 です。たまにミスをするので、最後は人間が見る必要があります。筆者は最低でも合計行の数字だけは確認するようにしています。

個人情報の扱いは慎重に

顧客の氏名・連絡先が入ったファイルを扱うときは、CLAUDE.md に禁止事項を書いておくと事故を防げます。

## 禁止事項
- 個人情報(氏名・電話番号・メール)を含むファイルは、処理結果を外部送信しないでください

巨大ファイル(10万行超)は分割する

1ファイルで10万行を超えると、処理が遅くなります。そういう場合は「1万行ずつ処理してください」と分割を指示するとスムーズです。

今も続けている習慣

月曜朝の儀式は、今もあります。でも内容が変わりました。

  1. コーヒーを淹れる(前と同じ)
  2. Claude Codeに「今週分お願い」と送る(新しい儀式)
  3. 3分後に完成したレポートを確認する
  4. そのまま部署のSlackに共有する

作業時間が減った分を何に使っているかというと、データを見て「傾向を考える」時間に充てています。集計が目的ではなく、その先の判断こそが本当の仕事だった、と気づかされました。