「Fable 5、業務で使っていいんですかね。顧客の名簿とか、契約書とか、入れても平気ですか」
復活のニュースを見た知人から、こう相談されました。私も最初に同じことを気にしたので、調べた内容を共有します。結論の前に、まず前提を一つ知っておく必要があります。
まず知っておく「30日は残る」
Fable 5は、入力したものと出力されたものを30日間保持することが必須になっています。データを預けたそばから消す「ゼロデータ保持」という運用は、このモデルでは選べません。
つまり、あなたが打ち込んだ文章は、少なくとも30日はどこかに残る。ふだんのチャットAIと同じ感覚で機密を貼ると、そこが引っかかります。この扱いは兄弟モデルのMythos 5も同じで、二つとも特別な監視対象のモデルという位置づけです。
人が見る可能性もある
もう一段、踏み込んだ話をします。30日間の保持に加えて、内容に人の目による確認が入る可能性があります。機械が保存するだけでなく、場合によっては人が見る。そう理解しておくのが安全です。
なぜここまで厳しいのか。背景には、Fable 5がジェイルブレイク(安全装置のすり抜け)をきっかけにいちど止められた騒動があります。強力なモデルには、それだけ監視の条件が付くようになった、という流れです。
じゃあ何を入れて、何を避けるか
前提がわかると、線引きはそれほど難しくありません。私が知人に伝えたのは、次のような分け方です。
避けたいのは、そのまま人に見られたら困る生のデータです。顧客の氏名や連絡先が並んだ名簿、契約書の原本、まだ公表していない売上の数字、パスワードの類。これらはFable 5に直接貼らない。
一方で気にせず使えるのは、公開情報や、一般化した相談です。「こういう条件の契約書のたたき台がほしい」と条件だけ伝える。名簿ではなく「20人ぶんの架空データで表を作って」と頼む。個人名を伏せ字にしてから貼る。こうすれば、能力はそのまま借りつつ、生の機密は預けずにすみます。
会社としてのルールにする
ここがいちばん伝えたいところです。この線引きを、一人ひとりの判断に委ねないほうがいい。「Fable 5には顧客の個人情報と契約書の原本は入れない」くらいの一行を、チームの決めごととして明文化しておく。
道具を業務に乗せるときの構え全般は、依存のリスクとあわせて別記事に書きました。
正直に言うと、私は便利さに任せて、会議の議事録をまるごと貼りつけようとしたことがあります。送信の直前で、参加者の個人名がそのまま入っているのに気づいてヒヤッとしました。あの一瞬がなければ、30日残るデータに実名を流していたわけです。
「残る前提」で一手間かける
ルールを決めたら、あとは日々の小さな習慣で守れます。私がやっているのは二つだけです。
貼る前に、個人名と生々しい数字がないかをざっと目で追う。あれば伏せ字にするか、架空の値に置き換える。もう一つは、テンプレートづくりと本番データを分けること。「請求書のひな形を作って」はFable 5に頼み、実際の金額や取引先名は、手元でひな形に差し込む。頭脳は借りて、生の機密は自分の側に置いておく、という分担です。
たったこれだけで、30日残るデータに社外秘が混じる事故はほとんど防げます。慣れると数秒の確認で済むようになります。
迷ったら別の環境も考える
どうしても機密性の高いデータを扱う作業なら、無理にFable 5に通さない選択もあります。データ保持の条件がゆるいモデルや、社内に閉じた環境を検討する。用途によって道具を替えるだけです。
戻ってきたFable 5は頼れる相棒です。ただ「入れたものは30日残るし、人が見るかもしれない」。この一点さえ押さえておけば、社外秘との距離の取り方で迷うことはなくなります。





