AIにコードを書かせる道具は増えました。増えたぶん「どれを使えばいいのか」という相談も増えました。
よく名前が挙がるのが Cline です。Claude Codeと比べてどうなのかと聞かれるので、両方の公式ドキュメントを読んで確かめました。予想していた違いのうち2つは、確かめたら違いではありませんでした。
触る場所が違う
Claude Codeはターミナル(文字で命令を打つ画面)で動かす道具として始まって、いまはデスクトップアプリやブラウザ、エディタ(コードを書くための専用アプリ)の拡張からも使えます。中心はターミナルにあります。
Clineは公式の説明では、まずエディタの中で動くAIコーディングの相棒という位置づけです。VS Code の拡張として提供され、JetBrains 系のプラグインもあります。加えてターミナルで npm i -g cline と打って入れるCLI(文字で操作する形の道具)があり、対話形式でもヘッドレス(画面を使わない自動実行)でも動かせるとされています。Kanban形式のWebのタスクボードも用意されています。
Cursor、Windsurf、Zed、Neovimといった他のエディタにも対応しているとあり、エディタの側から入る選択肢が広いのが特徴に見えます。
承認の粒度は、どちらも調整できる
ここは私が読み違えていた場所です。
Clineの入門ページには、ファイルの読み書き、ターミナルのコマンド実行、ブラウザの操作ができるとあり、そのうえで「すべての操作にあなたの明示的な承認が必要」と書かれています。この一文だけを読むと、1つずつ止まって確認する設計だと思えます。
ところが別のページを開くと、Auto Approve という機能が文書化されていました。ファイルを読む、直す、コマンドを走らせる、ブラウザを使う、といった種類ごとに自動承認を設定できる仕組みです。さらに YOLO モードがあり、これを入れるとすべてを自動承認します。
Claude Code側も、許可の規則を事前に書く、コマンド単位で先に許可を渡す、分類器(その操作が安全かどうかを自動で判定する仕組み)が安全な操作を通す auto mode を使う、といった調整ができます。
つまり粒度を調整できる点は両方に共通していて、思想の差ではありませんでした。違うのは既定値と、調整をどこから入るかです。Clineは全部止める状態から緩めていき、Claude Codeは許可の規則を足していく形になります。
自作コマンドに許可を先渡しする話は、こちらで扱いました。
課金の形も、どちらも複数ある
もう1つ、思い込みで書きかけた場所です。
Clineは3通りの入り方が示されています。公式のプロバイダ(モデルを提供している事業者)経由の従量課金で無料の選択肢もあるもの、ClinePass という月額 $9.99 の定額、そして自分のAPIキー(そのサービスを使うための自分専用の鍵となる文字列)を持ち込む形です。
Claude Codeも1本ではありません。Claudeのプランに含まれる形が基本ですが、APIキーによる従量課金(Claude Console)や、Amazon Bedrock、Google CloudのAgent Platform、Microsoft Foundry経由での利用も公式にサポートされています。自分の資格情報を持ち込む形はClineだけの特徴ではありません。
プランの価格帯そのものは、別記事で扱っています。
実際に残る違いは、選べるモデルの範囲
では何が違うのか。読み比べて残ったのはここでした。
Claude Codeはどの入り方をしても、選べるモデルはClaudeの中からになります。Clineは自分のキーを持ち込めるので、Claude以外のモデルも、自分の環境で動かしているモデルも選べます。
これが決定的な差になる要件は限られていますが、当たると大きいです。自社の環境から出せないデータを扱っていて手元でモデルを動かしたい場合、あるいは用途ごとに別の会社のモデルを使い分けたい場合。この2つに当てはまるなら、選択はほぼ決まります。
代わりに、料金の管理は自分の側に来ます。選んだプロバイダの体系に従うので、どこにいくら払っているかを自分で追うことになります。
確認できたことと、できなかったこと
比較記事でよく出る2点についても調べました。
ライセンスは公式のリポジトリで Apache-2.0 と確認できました。Plan/Act という動作モードも専用のページがあり、Planの側はファイルの変更もコマンドの実行もできず、調べて方針を立てるところまで。Actに切り替えて実行に移るという分担でした。入門ページには載っていませんが、確認できる情報です。
一方で確かめられなかったのは、速さや、長い作業をどこまで任せられるかといった使用感です。これはドキュメントに書かれる種類の情報ではないので、両方を同じ課題で走らせて比べるしかありません。今回はそこまでやっていないので、書きません。
決めるべきは2つだけ
研修で「どちらを入れればいいですか」と聞かれたとき、私は2つだけ確認します。
自分の作業がどこで起きているか。 ターミナルが中心なら Claude Code のほうが素直に収まります。エディタから離れたくないなら Cline の形が向きます。
Claude以外のモデルを選ぶ必要があるか。 必要ならCline、不要ならどちらでも構いません。
私自身はClaude Codeを主に使っていますが、理由は性能ではなく1つめのほうです。ターミナルで完結する作業が多いからにすぎません。エディタ中心の人に同じ理由は当てはまりません。
今回いちばんの学びは、事前に思っていた「承認の思想が違う」「課金の形が違う」がどちらも成り立たなかったことでした。読む前の印象で比較表を作ると、こういう間違いを載せることになります。
他のAIコーディングツールとの比較は個別に書いています。GitHub Copilotとの違いはこちらです。
どちらの道具も更新が速いので、料金や対応範囲は変わります。この記事の内容は2026年7月時点のものです。導入を決める前に双方の公式ページで現在の条件を確かめてください。





