「AIで開発期間が半分になりますか」と聞かれることが増えました。研修先でも、知り合いの経営者からも。

答えにくい質問です。工程によって効き方がまったく違うので、全体で何割という言い方ができない。それなら自分の案件で測ってみようと思って、工程ごとに時間を記録しました。その結果を書きます。

測ったもの

対象は当メディアの管理用に自分で作った小さな社内ツールです。記事の在庫とキーワードを突き合わせて表示するもので、画面5つ、機能は登録・一覧・集計の3種類。規模としては小さい部類です。

比較の相手は、同じくらいの規模で以前ひとりで作ったツールの記録です。厳密な対照実験ではありません。同じ人が似た規模のものを作った2件を比べただけなので、そのつもりで読んでください。

使ったのはClaude Codeです。

縮んだ工程

実装がいちばん縮みました。以前の案件で画面5つ分の実装に4日ほどかけていたところが、1日半で動く状態になりました。4割弱になった計算です。

テストコードを書く工程も縮みました。テストコードというのは、動作確認を人が手で繰り返す代わりに、確認そのものを自動で実行してくれる別のプログラムのことです。

これは実装より縮んだ比率が大きくて、以前は「時間が無いので後回し」にしていたものが、そもそも一緒に出てくるようになった。書く手間が下がると、書かない判断をしなくなるという副作用がありました。ここは想定していませんでした。

調べものも縮んでいます。使ったことのないライブラリ(よく使う機能をまとめた部品集のこと)の使い方を調べる時間が、検索して記事を読む形から、聞いて手元で動かす形に変わりました。

あと地味に効いたのが、既存コードを読む工程です。他人の書いたコードの流れを把握するのに、以前は半日かけていました。これが1時間程度になっています。

ほとんど縮まなかった工程

要件定義は縮みませんでした。むしろ少し伸びています。

理由は書いていて分かりました。実装が速いので、あいまいなまま進めると作り直しになる。だから前もって決める量が増えます。以前は実装しながら考えていた部分を、先に決めることになった。

受入の判断も縮みません。「これで業務が回るか」を決めるのは、業務を知っている人が実際に触って判断する工程です。ここにAIが入る余地を私は見つけられませんでした。触る時間は短縮できない。

それから、人に説明する工程が縮みませんでした。作ったものを使う人に説明して、使い方を覚えてもらう。ここは以前とまったく同じ時間がかかっています。

全体では3割ほどだった

合計すると、以前の案件が実働で12日程度、今回が8日程度でした。3割強の短縮です。

半分にはなっていません。これは実装が縮んだ分を、要件定義の増加と、縮まない工程が食っているからです。実装だけ見れば4割弱まで縮んだのに、全体では3割。縮まない工程の比率が高いほど、全体の効果は薄まるという当たり前の結果でした。

逆に言えば、実装の比率が高い案件ほど効きます。既存業務の置き換えのような、要件が既に決まっていて作るだけの案件は効きが良いはずです。新規事業のように何を作るか自体が動く案件は、あまり縮まないと思います。

工程の重心が上に移る

数字より重要だと感じたのはこちらです。

以前は工程の中で実装がいちばん重く、そこが遅れると全部遅れました。だから管理の目も実装に向いていた。いまは実装が軽いので、遅れの原因が要件定義と受入判断に移っています。

これは工程表の引き方を変える必要があるということです。実装に4割、要件定義に1割という配分の工程表を持ってきた場合、実装が速くなった分だけ余るのではなく、要件定義が足りなくて後半が膨らみます。 私はこれを一度やっています。

工程ごとの日数が手元に無い場合もあります。発注する側だと、見積書に総額と納期しか書いていないことがふつうです。その場合はまず「実装以外に何日かかっていますか」と聞いてください。答えが返ってこないなら、そこがそのままリスクになります。

要件定義側の詰め方は別記事にまとめました。

工程の並びと呼び方についてはこちらです。

レビューの位置づけが変わる

もう1つ、測っていて気づいたことがあります。

コードの量が増えるので、レビューの負荷が上がります。以前は自分が書いたものをレビューしていたので、書いた記憶が助けになっていました。いまは自分が書いていないコードをレビューすることになる。読む対象が増えて、しかも書いた記憶が無い。

ここは道具で受けるようにしました。今回書き換えた部分(差分と呼びます)をAIにレビューさせて、そのうえで自分が見る。レビューはコードを読んで問題がないか確かめる作業のことです。人が見る前に一段通すという形にしました。

これで自分のレビュー時間は減りましたが、ゼロにはなりません。 通したうえで自分が読む部分は残しています。データの扱いと権限のまわりだけは、自分の目で確認しないと怖いので。

聞かれたときにどう答えているか

冒頭の質問に戻ります。いまは「工程の内訳を見せてください」と返しています。

実装の比率が高ければ効きます。要件が固まっていない案件なら、まず要件を固める工程に人を割いたほうが早い。AIを入れる話と、工程の配分を見直す話は同時にやらないと効果が出ないというのが、測ってみての実感です。

数字を出しておいてこう書くのは何ですが、3割という数字自体はあまり信じないでください。私の1件の記録で、しかも私はもともと実装が速いほうではありません。ただ工程ごとに効き方が違うという形の部分は、規模が変わっても同じだろうと思っています。