自分の業務に使うシステムを、去年から自分で作っています。外に頼んでいません。
うまくいった話として書くつもりはないです。判断を間違えた箇所が3つあるので、そこを中心に書きます。
最初は市販のツールで足りていた
作っているのは、当メディアの記事の在庫管理です。どのキーワードで書いたか、どれが公開済みか、次に何を書くかを管理するもの。最初は表計算ソフトでやっていました。
行が200を超えたあたりから崩れ始めます。同じキーワードで2本書きかけたことがあって、それを防ぐには全行を目で見るしかない。並べ替えるたびに順番が変わるので、探す場所も変わります。
そこで業務システム向けのサービスを使いました。kintoneのような、画面とデータ置き場が最初から用意されていて設定で組む形のものです。
これで8割は解決しました。 重複の検出も、一覧の絞り込みも、設定だけでできる。ここまでは順調です。
足りなかったのは残りの2割
引っかかったのが3箇所ありました。
1つめが自動の取り込み。 検索順位のデータを毎晩取り込みたかった。手で貼り付ければできますが、毎晩やるのは無理です。
2つめが集計の形。 記事1本にキーワードが何個もぶら下がっていて、そのキーワード1つずつに順位の履歴が付きます。この3階建ての集計が、設定の範囲では組めなかった。
3つめが、他の道具とつなぐところ。 記事のファイルは自分のパソコンにMarkdown(記号で見出しや太字を表す、文字だけのファイル形式)で置いてあります。その中身と管理表を突き合わせたかったのですが、外から中身を読む手段がありませんでした。
3つとも「よくある機能」ではなく、自分の業務の形に固有のものです。ここが判断の分かれ目でした。
間違い1 — 8割できてから引き返した
いちばん高くついた失敗がこれです。
私は設定で8割まで組んでから、残り2割が無理だと分かりました。順番が逆でした。 変わった要件から試していれば、着手して1日で分かったはずです。
いま人に勧めるときは、要件のうちいちばん変わっている1つを最初に試すように言っています。よくある機能はどの道具でも作れるので、選定の判断材料になりません。決め手になるのは、はみ出す部分が作れるかどうかだけです。
作り方の選択肢そのものは、別記事に整理しました。
間違い2 — 全部を作り直そうとした
はみ出す部分が出たので、私は全部を自作に切り替えようとしました。これも間違いです。
冷静に考えると、8割は既に動いていました。捨てる理由がありません。実際にやったのは、足りない部分だけを別に作って、データでつなぐことでした。取り込みと集計だけを自分で書いて、入力と一覧は既存のまま残しています。
分量を書いておくと、取り込みの部分はClaude Codeに指示して半日で動きました。集計はデータの持ち方を決めるところで悩んだので、2日ほどかかっています。手が止まったのは書く作業ではなく、決める作業のほうでした。
全部を一つの道具で作らなければいけない、という思い込みがありました。業務システムは業務に合っていればよくて、道具が2つに分かれていても運用が回るなら問題ないです。
いま思うと、この思い込みは外注の見積書の形から来ていた気がします。1つのシステムとして一式で発注する形に慣れていたので、自分で作るときも一式で考えていました。
間違い3 — 自分だけが使える形にした
3つめは運用に入ってから分かりました。
作ったものは、自分のパソコンの中だけで動く形にしていました。自分しか使わないので十分だと思っていた。ところが外注のライターさんに記事の状況を共有する必要が出て、他の人のパソコンからは開けないことに気づきました。
これは担当者のパソコンにしかないExcelマクロと同じ構図です。その人が休むと業務が止まるやつ。自分でそれを作っていました。
いまは共有できる場所に置き直しています。作り直しではなく置き場所の変更なので傷は浅かったのですが、最初から誰が見るのかを決めておけば発生しなかった話です。
これは要件定義で聞き漏らしたのと同じ構図でした。自分が発注者なので、自分に質問しなかった。
自分で作ってよかったこと
失敗ばかり書いたので、続けている理由も書きます。
直したいと思った日に直せます。 使っていて気になった箇所を、その日のうちに変えられる。外注だと、気になった点を言語化して、見積もりを取って、順番待ちをすることになります。その過程で「まあいいか」と流れる改善が、かなりありました。
業務のほうを変えられます。 システムに合わせて業務を変えるか、業務に合わせてシステムを変えるかを、その場で選べる。両方を自分が握っているので、安いほうを選べます。
実装はClaude Codeに任せています。私はもともとコードを書ける側ではありますが、いま作っている部分に関しては、書く速度より決める速度のほうが律速になっています。
内製を考えている人に確認していること
研修先で「うちも自分たちで作れませんか」と聞かれたとき、私は2つ確認しています。
壊れたときに直せる人がいるか。 作るのは今の勢いでできます。問題は半年後で、作った本人が別部署に行った状態で誰が直すのか。ここが空席なら、作らないほうが安いことがあります。
業務が固まっているか。 毎月やり方が変わる業務をシステムにすると、毎月直すことになります。固まっていない部分は、当面は手作業のまま残したほうがいい。
私の場合、この2つがどちらも自分だったので踏み切れました。逆に言うと、そうでない場合は慎重に見たほうがいいというのが、1年やってみての感想です。
工程の全体像はこちらにまとめています。
作ると決めた場合、最初の一歩は画面1つ・判断1つ・保存1つを端から端まで通すことです。全部を設計してから作り始めるより、1本通してから広げるほうが早く間違いに気づけます。手順は上に挙げたWebシステムの記事に書きました。





